音声で聞かれる方はこちら↓
短い音声ですので、気楽に聞いて下さい。
会話の文字起こしはこちら↓
マーケティングの本当に重要なポイントを押さえてください。

「マーケティング入門講座」、ビジネスの“今”を解き明かす時間です。ナビゲーターのさいとうです。
マーケティング専門家のかねだです。さいとうさん、本日もよろしくお願いします。


よろしくお願いします!かねださん、今日のテーマは「行動経済学」。ええと、ビジネスの世界では「最強の学問」とも言われるそうですが…
ええ。


なんだかこう、少し難しそうな響きですよね。
ええ、そうかもしれませんね。でも実は、私たちの毎日の買い物とか、何気ない選択の裏側にある…


はい。
非常にこう…人間くさい心の動きを解き明かす、面白い分野なんですよ。


人間くさい、ですか。
はい。あの、伝統的な経済学では「人はいつでも合理的に…


合理的に。
一番得な選択をする」って、まあ、考えられてきたんですね。でも、さいとうさん、本当にそうでしょうか?


うーん…言われてみると、ダイエット中なのについ、お菓子を買ってしまったり…
うんうん。


そんなに必要じゃないのに「限定品」って言葉に弱かったり…合理的じゃないことばかりしてるかもしれません。
そうですよね。行動経済学の出発点って、まさにそこなんです。「人間は、不合理で、ある意味で愛すべき『バグ』をたくさん抱えた生き物だ」と。


へぇー!
この前提に立って、その心のクセ、つまり「バイアス」を理解しようというのが、この学問なんです。


愛すべきバグ!なんだか自分の欠点が許されるようで、いい言葉ですね。そのバグ、つまりバイアスを理解することが、マーケティングにどう繋がるんですか?
人の心の動きのパターンが分かれば…


はい。
より相手に響くメッセージを届けたり、気持ちよく選択できるお手伝いができますからね。今日は、その中でも特に強力なものをいくつか見ていきましょう。


はい、お願いします!
まずは、最も有名なものの一つ、「損失回避」の法則です。これ、シンプルに言うと、人は「得をしたい」という気持ちより…


うんうん。
「損をしたくない」という気持ちを、はるかに強く持っています。


ああ、分かります!1000円もらう嬉しさより、1000円失くす悲しさの方がずっと大きい気がします。
まさに。


じゃあ、ウェブサイトで見る「残り3点!」とか「タイムセール終了まであと10分」みたいな表示も、この「損したくない」気持ちを刺激しているわけですね。
まさに。素晴らしい具体例です。だから、「この特典を手に入れてください」と言うよりも、「この特典を逃さないでください」と言った方が、人の心を動かしやすいんです。


なるほど…。伝え方一つで全然違いますね。他にはどんな「バグ」があるんですか?
では「アンカリング効果」はどうでしょう。最初に提示された情報が「錨(アンカー)」となって…


錨(いかり)?
その後の判断基準を無意識に縛ってしまう、というものです。


縛られてしまうんですか?
はい。例えば、洋服屋さんで「定価3万円」という値札を見た後に、「セールで1万円」と書いてあると…


はい、はい。
すごくお得に感じますよね。でも、もし最初から「1万円」とだけ書かれていたら、そこまでの感動はなかったかもしれません。


確かに!最初に見た「3万円」という数字に、完全に引っ張られてますね。
ええ。これを応用すれば、サービスの価値を伝える時に、まず市場の平均価格とか、その問題を放置した場合の損失額といった大きな数字をアンカーとして示すことで…


うーん。
自分たちの提案をより魅力的に見せることができます。


面白いですね!あと、もう一つくらい、私たちがよくハマってしまう「罠」、教えていただけますか?
罠ですか。では、「社会的証明」というバイアスですね。これは、「みんながやっていることは正しいはずだ」と…


あー。
思い込んでしまう心のクセです。


あー!「お客様満足度No.1」とか「行列のできるラーメン店」とかですね!
そうです、そうです。


レビューの星の数が多いと、つい安心して買ってしまいます。
その通りです。私たちは、自分で判断するのが難しい時…


うーん。
無意識に周りの人の選択を参考にしてしまうんです。


なるほど。
ですから、お客様の声や導入事例を見せることは、新しいお客様の不安を取り除いて、背中を押す非常に有効な手段になります。


なるほど…。損失回避、アンカリング、社会的証明。こうして聞くと、私たちの意思決定って、本当にたくさんの「バグ」に影響されているんですね。
ええ。


なんだか、自分で選んでいるつもりが、実は巧みに選ばされているような…そんな気さえしてきました。
大事なのは、これらは人を操るためのテクニックではない、ということです。相手の心の動きを理解して、「そっと背中を押してあげる」、つまり「ナッジ」することで…


はい。
お互いにとって、より良い結果を生むための知恵なんです。


愛すべきバグを理解して、優しく後押しする。行動経済学が「最強」と言われる理由が、少し分かった気がします。かねださん、本日もありがとうございました。
ありがとうございました。


さて、ここでリスナーの皆さんにも、考えてみていただきたい質問があります。あなたのビジネスやサービスにおいて、お客様が選択に迷っている場面はどこでしょうか?
うんうん。


そして、そのお客様の背中を、どんな「優しいナッジ」で後押しすることができるでしょうか?ぜひ、日常に隠された心のスイッチを探してみてください。